夏油様を解放してください

夏油様を解放してください



2017年12月24日、五条家の屋敷のある部屋で特級術師二人が共に同じ卓の上で食事を摂っていた。

「メリ〜クリスマ〜ス!!」

「あ、ああ…」

白髪の術師は左手を天高く突き上げ、心底楽しそうにしているのに対し、前髪が特徴的な術師はなにやら複雑そうな表情を浮かべている。

「悟、もうこんなことはやめにしよう」

前髪が特徴的な術師がそう言うと、白髪の術師──五条悟は理解が出来ないといった表情で彼を見つめた。

「なんで?ここでの暮らしが嫌になった?ここなら傑の嫌いな猿共にも会わなくて良いんだぞ?ここを出たら傑は処刑されるんだぞ?なんで?なんで?なんでなんでなんでなんでなんで────」

五条は前髪──夏油傑を物凄い剣幕で捲し立てた。その瞳には光が宿っておらず、少しでも刺激すれば何をしだすかもわからない程に狂っていた。

「いや、そうじゃないんだ。確かに悟の家の人達は私に良くしてくれるし、何もしなくても食うに困らない。ただ……──ぐふッ!?」

夏油は最後の部分を言う前に五条の赫が額を直撃し、血反吐を吐きながら縛り付けられていた椅子ごと吹き飛ばされる。

「なんでだよ!!何がいけないんだ、傑!!!!」

「悟…!待ってくれ、待って……あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」

五条は怒りに身を任せ、夏油の両足を引きちぎる。その様はまさしく怒髪天と呼ぶに相応しかった。夏油は恐怖のあまり泣き出す。

「わ…えぐっ…ぅ……悪か”っ”た”…!悪か”っ”た”よ”…!もう外"に"出"る…出"る"の…諦"め"る"か"ら"……!」

泣きじゃくる夏油の顔を見て、五条は正気に戻る。夏油の足を反転術式で戻し、目に涙を浮かべながら彼を抱きしめた。

「違う…違うんだ!ごめんな、傑…!!」

五条は未だに恐怖で声が出せない夏油を抱いて、ただひたすらに謝り続ける。

「(ああ、今日もダメだったな……こんなもので呪力も術式も封じられて、いっそのこと自分で…無理だな)」

夏油は手の甲に貼られた札を見て、絶望した表情をする。彼は解放を望むのは両親や巻き込んでしまった無関係な人々への贖罪のためか、それとも再び野望を追い求めるためか、それは本人にさえわからなかった。確かなのは彼がこの生活を終わりにしたいと、それだけだった。五条家の屋敷の地下で二人は泣いていた。

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屋敷の前で地に頭をつけて何かを頼み込む女子高生二人が居た。二人は口を揃えてこう言った。たった一つの要求、それは────

「夏油様を解放してください」

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